電脳大本営の産みの親であるフェイスブック・グループ「軍事・軍隊・武器・兵器・戦術・戦略等軍事関連の研究」に大変興味深いご投稿がありました。

何度かの議論があった、今後の核戦争の様相や対応策を踏まえて、今後の話を発展していく上でたいへん参考になる研究だと思います。

フェイスブック上の投稿は時とともに、探しにくくなってしまいますので、スレ主様のご許可を頂戴してここに収録して皆様の参考に供したいと存じます。
以下本文です。

【素人が検証してみた】核兵器は人類を滅ぼすことが出来るか?

最近、核兵器や核武装に関する投稿を幾つか目にし、ふと上記の疑問が思い浮かびました。小説や映画では、核戦争で文明が崩壊したり、或いは人類が滅亡してしまったりするものがありますよね。でも、実際のところはどうなんでしょう?気になったので、調べてみました。(私は核兵器に関しては全くの素人なので、誤っている点も多々あるかと思います。ご叱咤頂けると幸いです)

目下、世界には約15,350発の核兵器が存在しているそうです。核弾頭保有数№1のロシアは約7,300発、№2のアメリカは約7,000発とのこと。凄い数ですね。正直ゾッとします。
《ソース》http://www.joyemon.com/entry/2015/11/12/013750
ただ、核兵器にも様々な種類(破壊力)があるわけで、頭数だけ数えても仕方ない気がします。何とか破壊力に換算できないか…と探していたら、以下のサイトを見つけました。
http://kakujoho.net/ndata/nstat.html
少し昔(2007年)のデータですが、当時の世界には3,000メガトンの核兵器が存在していました。これは、広島型原爆にして約18万7500発分だそうです。ひえ~。。。ちなみに当時のロシアは15,000発、アメリカは10,000発の核兵器を所有していたとあるので、この10年で核軍縮が進んだことが分かります。なので、この3,000メガトンという数字は古新聞なのですが、他にデータがないので、これをベースに検証を進めます。言い換えれば、敢えて悲観主義を採って核の破壊力を多めに見積もります。米露の緊張が再度高まったとでも考えてください。
さて、広島型原爆18万発なんて言われても計算不可能なので、もっと破壊力の大きな核兵器の威力を検証したデータはないか…と探していたら、ネブラスカ大学の研究なるものが出てきました。広島型原爆の3,000倍の破壊力を有する世界最凶の水爆、ツァーリ・ボンバ(以下、TB)を東京に落としたらどうなるか、というものです(なんて不謹慎な…)。TBの威力は50メガトンなので、全世界の核兵器はこいつに換算して60発分ということになります。うん、これなら検証できそうです。早速見ていきましょう。
http://www.huffingtonpost.jp/…/if-atomic-bomb-in-tokyo_n_56…
東京駅上空を爆心地とすると、キレイに都心が消滅するのが分かります。しかし、周辺の衛星都市(横浜、さいたま、千葉、相模原の4つの政令指定都市)も吹き飛ばそうとすると、それぞれに1発づつ投下する必要がありそうです。従って、首都圏を壊滅させるには少なくとも5発のTBが必要になります。なお、首都圏の人口は3,700万人なので、TB1発あたり740万人に深刻なダメージを与えることになります(但し、首都圏の人口には千葉県の南側や、神奈川県の西側など周縁郊外区域の数字も含まれるので、この見積もりは明らかに過大ですが、悲観主義に則ってこのまま進めます)。この計算だと、全世界の核兵器は、東京クラスの都市圏12を破壊することが出来ると言えるでしょう。これで大体答えが見えてきました。大規模な核戦争は、深甚なダメージを齎すものの、文明を崩壊させるレベルには至らなそうです。

ここで、もう少し検証を深堀りします。中露同盟 VS NATO+日本で核戦争を行ったとします。これは、そうなる蓋然性があると私が考えているわけではなく、ただ単に思考実験のために最悪の状況を設定したものです。中露チームは1,860メガトン、TB換算で37.2発分の核兵器を持っています。対する西側陣営は、1,360メガトン、同27.2発分です。先ほどの計算から、TB1発で人口740万人の都市が一つ、0.1発で74万人の都市が一つ蒸発すると見なします。また、両陣営とも、持てる核兵器が枯渇するまで、敵対する勢力の人口規模の大きな都市から順番に潰滅させていくと仮定します。
都市人口のソースは以下です。
https://esa.un.org/unpd/wup/CD-ROM/Default.aspx
まず中露チームのターン。TB保有量37.2発の破壊力は尋常ではなく、西側陣営の人口220万以上の都市は全て壊滅させられます。最大の損害を被る地域は北米(アメリカ、カナダ)です。16.4発のTBが投下され、24のメガロポリスが灰燼に帰します。米国ではニューヨーク(1,900万人)、ロサンゼルス(1,200万人)、カナダではトロント(600万人)などです。生き残る人口30万人以上の地方都市は127、そのうち人口100万以上の都市は27です。生存する最大の都市はセントルイス(218万人)となります。次いで被害が大きい地域は、日本です。10.7発のTBが投下され、6つの大都市圏が消滅します。東京、大阪(2,000万人)、名古屋(940万人)などです。生き残る人口30万以上の地方都市は僅か11、うち人口100万以上は広島、仙台の2つだけです(いずれも人口200万強)。もっとも被害が小さいのがヨーロッパ(NATO加盟国)ですが、それでも10.2発のTBが投下され、パリ、ロンドン、イスタンブールなど1,000万人級の巨大都市を始めとして、14の都市が地上から消えます。生き残る人口30万以上の地方都市は133、うち人口100万以上は16です。ハンブルグ、トリノ、リヨンなどが最大級(人口約200万)となります。
続いて西側陣営の反撃です。人口の関係上、中国が集中攻撃をうけますが、中露とも人口370万人以上の都市は須らく跡形もなくなります。中国ですが、24.9発のTBが炸裂し、上海(2,400万人)、北京(2,000万人)、広州(1,250)など25都市が潰滅させられます。それでも生き残る人口30万人以上の地方都市は373もあり、100万以上は80もあります。さらに、人口200万以上でみても、合肥、太原、南寧など22都市に上ります。ロシアについては、2.3発のTBが投下され、モスクワ(1,200万人)、ペテルブルグ(500万人)の2都市が蒸発します。生存する人口30万以上の地方都市は61、うち100万以上は11です。
以上を総括すると、世界が最悪の形で核戦争を経験したとしても、人類滅亡はもちろん、文明の崩壊も取り敢えずは回避できそうです(100万都市が各地に複数残存しますし、オセアニア、東南アジア、南米は無傷なので)。ちなみに、冷戦中ソ連は最大で4万発、米国は同じく3万発の核弾頭を保有していました。この前提で計算したら、全く違った結果が出たかもしれません。核拡散が注目されがちですが、米露間での核軍縮が着実に進んでいることも認識しておきたいと思います。
また、偶然の産物ではありますが、日本が核攻撃に対して極めて脆弱なことが分かりました。これは、限られた大都市圏に人口が集中しているためです。ロシアが保有する核兵器の1/3を放っただけで、7900万人相当の大都市部が消えます。他方、中国の核戦争に対する抜きんでた耐久性も明らかになりました。米国が保有するほぼ全ての核兵器を使用しても、多数の大都市がしぶとく生き残ります。まあ、それでも1億8400万人相当の都市圏が消滅しているのですが、人口の14%相当でしかありません。日本が単独で中国相手に核戦争を行うのは全く不可能であるというべきでしょう。現状、中国はTB7発分の核兵器を保有していると推測されるので、東京と大阪の大部分を灰燼に帰することが出来ます。これと同じ程度のインパクトを中国に与えようとすると、米露に数倍する核兵器を保有しなければならず、全くの白昼夢です。従って、米国の核の傘がなくなった場合、日本は核保有を迫られる可能性が高いわけではありますが、その場合でも、飽くまで核戦争抑止を目的として、重要な軍事基地や軍需施設、政治・経済の中枢部をピンポイントで破壊するポーズをとるのが精一杯であるように思います。これなら広島型原爆20~30発位の保有で済み、中国としても簡単には核使用には踏み切れないと思うのですが、如何でしょうか?

長文失礼しました。