国のために死ぬのは良いことだ
「ユダヤ陰謀論」というものが昔からあります。
ユダヤに限らず、陰謀が陰謀論として語られてる時点で、すでに眉唾モンである、ってことは電脳大本営をお読みくださる賢明な皆さまには申し上げるまでもないことでしょう。
陰謀論に直接反撃してもねぇ
ただ、どんな主張であれ主張することは自由ですし、一々あげ足取りみたいに陰謀論の矛盾点や根拠の誤りを指摘していくのも大人げないし、それをしたところで「陰謀論を広めよう」と言う方が理解してくれるとも思えません。
そこでユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3つの宗教も考えながら「ユダヤ人の正体」を暴いてやろう(笑)、と言う企画であります。
後半は電脳大本営らしく、「国」に殉じた人のお話になります。
わが国では殆ど知られていない人ですが、儂が最も尊敬する人物の一人でありますので、是非、後半部だけでもお読みいただけると幸いです。
ユダヤ人はアソコら辺に住む権利が…
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の3宗教、儂に言わせれば「アソコら辺の宗教」は「聖典」である「旧約聖書」を共有しています。
「旧約聖書」とは、もともとユダヤ教の基本経典でした。
新約・旧約の「約」とは数の「だいたいこれくらい」って約ではありません。
良く知られているように「契約」の約でして、もちろん神サマと人間の契約です。
旧約聖書にはナントカ記(日本書紀でも古事記でもないからね)って言う章がいくつもあるんですけど、その一番最初が「創世記」。
創世記には、アブラハム・イサク・ヤコブって親子3代の話があって、神サマはヤコブとその子孫の繁栄を約束して、カナンの地を与える、って契約をするんです。
「カナンの地」とは今のイスラエルとかパレスチナのある、「アソコら辺」であります。
ね、ユダヤ人(ユダヤ人はいわゆる「人種」ではなく、ユダヤ教を信仰する人、って意味が濃厚です)は神様からあの土地を貰ってるんだから、「陰謀」なんぞする必要が無いんです…って言ってしまっては面白くないんで、言わずに話を進めましょう。
神サマからイスラエルを貰ったのに、ヤコブのドラ息子どもは(ドラ息子にした親が悪い、と思うぞ)、兄弟げんかを繰り広げ、一番下のヨセフはエジプトに売り飛ばされちゃいます。
ところが、ヨセフは主人公なのでエジプトで出世します。
都合よく、後年イスラエルと呼ばれるようになる土地は飢饉になり、食い詰めたヤコブ父ちゃんと糞兄貴たちはヨセフに呼び寄せて貰い、養ってもらうのでした。
めでたし、めでたし…なワケ無いですよね。
ココからが皆さん良くご存じ「出エジプト記」の話でして。
エジプトでそこそこ繁栄したユダヤ人(ヨセフ一家)でしたが、ソコは「外国」のこと。ちょっと状況が変われば、迫害されるモノ。
苦しい状況になると都合よくヒーローが出てくるのは、ウルトラマンもマーベルも変わりません。
旧約ではアイアンマンの代わりにモーセって人が登場いたします。
この人がイスラエル人を引き連れてエジプトを脱出、海を割ったり屁をこいたりしながら「カナンの地」を目指すのでした…この経緯は映画でも紹介されてますので、自宅待機の暇つぶしに見ても良いでしょう。
CGも円谷もナシで良く撮ったもんだと思います。
モーセちゃんはヒーローですけど、あくまでも「神サマの命令」を受けて頑張った「預言者」で、立場としては人間側。
奇跡も神サマに起こして貰うんですね、自分で起こせるワケじゃ、ありません(笑)
新宗教「キリスト教」
旧約はそのあと、ヨシュア記でユダヤ人が「カナンの地」を征服していく様子を描きます。
「カナンの地」を征服すると、ユダヤ人ってかイスラエル人は王国を建て、ダビデが王様に。
ダビデの子がソロモン王で、古代イスラエル王国は最盛期を迎えます。
この後、王国は二つに分裂(イスラエル王国とユダ王国)してアッシリアやバビロニアに滅ぼされ(バビロン捕囚ってお聞きになったことがあるでしょ?)…ああ、めんどくせー。
ココまで、あくまでも旧約聖書の話だからね。「歴史書」からの話ではないから(笑)
まあ、いろいろありましてね、紀元前後はイスラエルの土地はローマ帝国の支配下にあったのでございます。
んでもって、その紀元頃に「ユダヤ教」を改革したのが「キリスト教」であります。
キリスト教の始祖とかその取り巻きどもは、第2の聖典として「新約聖書」を加えます。
4つの福音書(イエス・キリストの言葉が書いてある)を骨格にして、紀元2~3世紀頃までに成立した神様との「新しい契約」だって建前です。
契約内容ってより何より「完全一神教」だったユダヤ教に、「神の子」だとか「聖霊」やらなどという不純?な概念を持ち込んだのが大変化だ、と儂は思います。
コレにカチンときた旧来のユダヤ教徒が、キリストを殺しちゃいます(ちょっと時間軸がずれてますが、説明を簡単にするための方便としてご容赦ください/めんどくせぇんだもん)。
これが、キリスト教徒が作り出したヨーロッパ世界の中で、ユダヤ人がたびたび迫害を受ける一番奥にある原因だと、儂には思えます。
イスラム教は2つの聖書に加えて「預言者」ムハンマドが神から告げられた聖典「コーラン」を最も重視します。
でもイエス・キリストはイスラム教徒にとっても、神の使わされた預言者の1人で「尊重されるべき人」でした。
ユダヤ人、放浪へ
神サマから契約でもらった土地(前に住んでた人達は頃しちゃって桶!と神サマが言ったんですよ)で、一旦は王国を築いて繁栄したユダヤ人でしたが、キリストの「宗教改革」当時はローマ帝国の占領下にありました。
キリストを殺して50年くらいたって、ユダヤ人たちはローマ帝国に独立戦争を仕掛け、ケチョンケチョンにやられちゃいました。
ローマ帝国は支配するといっても、大変寛大だったのですが、さすがに反乱者には厳しい。
ローマ帝国はユダヤ人たちをイスラエルってか「カナンの地」から追放してしまいました。
以降、今のイスラエルが建国されるまでユダヤ人は「国を持たぬ民族」として世界中をさまようことになります。
こういう「土地を追われた民族」はユダヤ人だけじゃありません。
しかしそんな人達は、行った先で現地の人たちと結婚したりして同化していきます。
ところがユダヤ人たちは違いました。
自分達の信仰を守り、アイデンティティを持ち続けていたのです。
大昔のユダヤ人の人口はわかりませんが、現代では全世界で約1300万人。
わが国のおよそ1割、東京の人口ほどしかいないのです。
世界を裏で支配してる民族が、「ホロコーストによる人口激減」から70年掛かって未だに回復できない?
しかもその間、二千年来持つことがなかった「母国」をついに持つ事が出来たのに?
反撃しないって言ったのに反論しちゃいましたね。
ここから「後半」に移ることにいたします。
日露戦争
話の舞台は日露戦争の時代です。
上のグラフでも見て取れるように、ロシアにもユダヤ人はたくさん暮らしていました。
当時では世界最大の「ユダヤ人コミュニティ」ですね。
ユダヤ人は巨大な多民族帝国「ロシア」を構成する一民族だった、ともいえます。
「母国」であるロシアが、極東のちっぽけな島帝国と戦争になると、在ロシアのユダヤ人たちも、当然兵士としてロシアのために戦います。
ここでの主人公「ヨセフ・トルンペルドール」もそんなロシア兵の一人でした。
トルンペルドールは多少のお金もある家庭で育ち、教養もあったので医者を目指したのですが、ロシア帝国ではユダヤ人は(差別で)医者になることは出来ませんでした。
不思議に歯医者はOKなので、従軍するまでトルンペルドールは歯医者だったのです。
志願したトルンペルドールは旅順防衛軍に配属され、さらに自ら望んで最前線で戦うことになりました。
すべては、ロシア帝国内でユダヤ人の地位を向上させるためでした。
自分がロシア帝国のために勇敢に戦うことで、ユダヤ人の地位を向上させたい、との思いがトルンペルドールを最前線へ駆り立てていたのです。
このパターン、今昔や洋の東西を問わず、たくさんありますね。
恐れを知らぬように戦うトルンペルドールは、精悍な日本軍の攻撃で片手を吹き飛ばされてしまいました。
流石に昏倒して後送されたのですが、カラダが動くようになると無理やり最前線へ。
残された片手でピストルを握り、旅順要塞の陥落まで戦い抜きました。
捕虜収容所
旅順が開城するとトルンペルドールも日本で捕虜となりました。
わが国がロシア捕虜を厚遇したことは良く知られていますが、900人ほどのユダヤ人捕虜に対しても、十分以上に対応していました。
ユダヤ人捕虜については、一般のロシア兵とは隔離して収容し、宗教上の慣習をきちんと尊重したのです。
一方のトルンペルドールは「片腕のヒーロー」としてロシア兵の中で一目置かれる存在でした。
しかもトルンペルドールには、医者になってもおかしくない教養がありました。
ロシア兵には無学文盲の人が多かったので、捕虜収容所内で教育をしたのです。
ユダヤ人としての慣習やお祭りも収容所内で続けたのですが、戦勝国の日本は進んで協力してくれました。
このような経緯は、我が明治大帝のお耳にも達していました。
明治帝は、トルンペルドールが片腕となってしまったことをお憐みとなり、トルンペルドールに義手を賜りました。
ユダヤ人に国家意識はあったのか?
トルンペルドールが日本で捕虜生活を送っている頃、すなわち20世紀の初頭にユダヤ人たちは「自分達だけの国」を持ちたい、作ろうという気持ちはあったのでしょうか?
私は大いに疑問だ、と思います。
「あの辺(今、イスラエルがある所)にユダヤ人の国を作ろう」
と言う考え方を「シオニズム」と言います(決して怪しげな陰謀を巡らす団体ではありません)が、どうもトルンペルドール以前には大きな動きではなかったように思えるのです。
もちろん、違う考え方もあるでしょう。
私は日本人ですから、どうしても「日本にいた人」を中心に考えてしまいますからね。
それでもトルンペルドールが日本で厚遇されて、天皇陛下から義手まで賜り
「国っていいなあ」
と思い、
「俺たちユダヤ人も国を作ろう」
と思ったことは間違いないでしょう。
もう一つ、トルンペルドールさんの考えを私なりに推測すると…
トルンペルドールは、大日本帝国軍と戦い、日本の人々やその人たちが構成する社会と接して、
「大国であるロシアが、なぜ武力にも経済力にも劣る小さな日本に負けたのか?」
と考えたハズです。
そして一つの結論に達したことでしょう。
「大日本帝国の国民は高い士気を持ち、規律を自らすすんで守る。
つまり、ロシア帝国に比べて「組織力」がとんでもなく高い。
これこそが弱小日本の勝因ではないのか…」
弱小国日本が大国ロシアの圧力をはねのけた様に、ユダヤ人のような「弱小民族」にだって生存を続ける権利があり、そのための方策があるはずです。
たとえ弱小であっても、目的を貫き通す強い意志と組織力があれば…これこそがトルンペルドールの胸中で渦巻いた熱い思いだったんじゃないでしょうか。
この思いを胸に、トルンペルドールは大日本帝国の捕虜収容所の中で(たぶん)世界初のシオニズムの組織を作ったのでした。
ロシアで
ポーツマス条約の締結によってトルンペルドールはロシアに送還されます。
ロシアでも、トルンペルドールは英雄でした。
片手を吹き飛ばされても、ピストルを握って敢闘したことはロシア皇帝にも知らされていました。
ロシア皇帝もまた、これを賞賛して、トルンペルドールに義手を送ったのです。
トルンペルドールは海と陸との2大帝国の帝王に目を掛けられ、それぞれから義手を賜る、と言う史上空前絶後の名誉を得ることになったのです。
しかし、これはもはやトルンペルドールの望んだことではありませんでした。
トルンペルドールの希望はカナンの地に、シオンの丘にユダヤ人の国を築くことになっていたのですから。
入植
まだまだ、トルンペルドールのようにイスラエル建国の理想をもった人びとは少数でした。
少数でしたが、当時イスラエル地域を支配していたトルコ帝国から土地を買って、開拓を始めていました。
トルンペルドールもその一人となり、しかも危険だと言われていた北部のテルハイと言う場所にわざわざ土地を求めたのです。
その地は後に、イスラエル国の飲用水を供給する貴重な地域となるんですが、そこまでトルンペルドールが読んでいたのかどうかは判りません。
ユダヤ人の入植には、当然のようにアラブ人が反発します。
現代と同じように武力で入植者を攻撃するのが当然、でした。
だからこそ北部は危険だと言われていたんです。
アラブ人がテルハイにも攻め寄せてきたとき、トルンペルドールは残されていた片手で銃を取り「撃て!」と叫んだそうです。
2000年の間、故郷を追われて彷徨った民族が、久しぶりに高らかに上げた雄叫びに、私には思えます。
多勢に無勢で、トルンペルドールは奮戦もむなしくアラブ人の手に掛かってしまいます。
トルンペルドールの最後の言葉は
「国のために死ぬのは良いことだ」
でした。
日本です
もちろん、トルンペルドールが倒れた時には「イスラエル」と言う国は地球上には存在していません。
トルンペルドールの瀕死の頭の中に浮かんでいたのは、いったいどんな国だったのでしょうか?
生まれ育ったロシアでしょうか。
いやいや、捕虜生活を送り、「自分たちの国」の良さを知らしめられた日本ではないか?と私は考えます。
当時の日本人が、ユダヤ人に「陰謀の影」すら見ていなかったことは、誰でもお判りだと思います。
ユダヤ人もまた、「陰謀」をたくらむ暇も余裕もあろうはずがありません。