ヘリ搭載護衛艦「かが」と航空母艦「加賀」
ヘリコプター搭載護衛艦「かが」が進水しました。
ほんらい、日本の艦隊勢力が増えるのは就役するまで待たねばなりませんから、騒ぐのはそれからで十分だと思うんです。
が左右どちらからもやいのやいのと聞こえてきますので、電脳大本営としては
「現用軍艦に対してだって一言くらい言えるぞ」
って言うところを見せておかなければいけません。
空母ではありません/将来もなれません
大変残念ではありますが、小見出しの通りです。
ずいぶん前に輸送艦「おおすみ」級が就役したときにも「空母」だぁ!って言う声がブサヨから聞こえて来ました。
一番艦の「いずも」に比べて、旧海軍の空母を彷彿とさせるネーミングのせいか、「空母」の呼び声が一層高いようです。
しかし、
左側に対しては、「ちょっとは状況を見てモノ言え、ボケ!」
右側の人には「私だって欲しいんですけどね、これではまだムリなんです」
と申し上げなければいけません。
今回進水した「かが」の要目を見てみましょう。
「かが」の要目
基準排水量:19,500トン、全長:248.0m、全幅:38.0m、深さ:23.5m、吃水:7.1m
主機 COGAG方式(COmbined Gas turbine And Gas turbine/ガスタービンエンジンを複数組み合わせた推進方式のこと)、LM2500IEC型ガスタービンエンジン(28,000ps) × 4基、2軸推進
最大速力 30ノット、乗員 520名(うち司令部要員50名)+長期宿泊可能者450名*
搭載能力 貨油 3300kL、1/2tトラック × 50台*
兵装 高性能20mm機関砲 CIWS×2基、SeaRAM 近SAMシステム× 2基
搭載機 SH-60K哨戒ヘリコプター、MCH-101掃海・輸送ヘリコプターなど計14機
C4ISTAR OYQ-12 戦術情報処理装置、
OPS-50 3次元対空レーダー、OPS-28 対水上レーダー、OQQ-23 ソナーシステム
電子戦・対抗手段: NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置、Mk.137 デコイ発射機 × 6基
OLQ-1 魚雷防御装置 × 1式
続いて比較検証のために航空母艦「加賀」の要目です
「加賀」の要目(改装後)
排水量 基準:38,200t 、全長:247.65m (水線長:240.30m)、全幅:32.50m、吃水 9.5m
主缶:ロ号艦本式8基、機関:ブラウン・カーチス式タービン2基・艦本式タービン2基 4軸推進
最大速力:28.3ノット、巡航速度:16ノット、航続距離:10,000カイリ
乗員 1,708名
兵装:20cm単装砲10基10門、12.7cm連装高角砲:8基16門、25mm連装機銃 :11基22門
装甲 舷側:152mm~279mm
搭載機 常用72機、補用18機(1941年12月7日保有機:零式艦上戦闘機:21機、九九式艦上爆撃機:27機、九七式艦上攻撃機:27機)
(下の画像はミッドウェイで炎上中の「加賀」とされます。)
大きさはほぼ同じですが
ちょっと余談なんですが、「いずも」級の大きさが「加賀」とほぼ同じなのに排水量が半分なのを「自衛隊が隠している」とか書いてる軍事ライターまでいましたね。
FBのコメで「阿呆のヨタ記事」と書いて置きましたが、ここでその理由を記しておきます。
「加賀」が「かが」に比べてずいぶん重いのは装甲と機関の重量の差が大きいのです。
大東亜戦争までの軍艦は大なり小なり耐弾のための「装甲」を持っています。「加賀」はもとが戦艦ですので、もっとも装甲が分厚い艦種なんです。
現代では、どんなに分厚く重い装甲を纏っていてもミサイル一発で轟沈ですから、装甲など持っていません。
その上「かが」の機関はガスタービンですから、「加賀」の蒸気タービンよりもはるかに軽量小型です。
ガスタービンは燃料を燃やして出来た熱気を直接タービンに吹き付けて回します。
それに対して蒸気タービンは燃料でお湯を沸かして、出てきた蒸気をタービンに吹き付けるんですから、ボイラーが余分に要ります。
もの凄い高温高圧にしなければいけませんので、家庭用の圧力鍋のようなチャチなものではありません。重くなってしまうんです。
そんなわけで「かが」の重量が軽いわけです。
そして、「空母」ではなくて将来の改装でも「空母」になれない理由はたくさんあるのですが、コレを指摘しておくだけで十分でしょう。
私は「空母」を一般的に言う攻撃型空母の意味で使っています。
搭載機が
搭載機の大きさを考えなければいけません。
「かが」のMCH-101掃海・輸送ヘリコプターは全長22.8m(ブレード折り畳み時15.8m)、全幅18.6m(同5.6m)、全高6.6m(同5.3m)自重9.9tです。(上に画像あり)
これを運用したらよいのじゃ、と言われる「F-35B」だと全長15.60m、全幅10.67m、全高4.60m、重量13.9t、最大離陸重量27tにもなります。
これに対し「加賀」に乗っていた零戦(21型)は全幅12.0m 、全長9.05m、全高 3.53m、自重 1.754t(全備重量2.421t)。
全く大きさと重さの次元が異なりますね。
70年の間に、艦載機は大きさと速度を飛躍的に向上してしまったんです。
しかも、空母の空母たる所以は「甲板に降りられる」だけではありません。
航空機に限らず、兵器はぎりぎりの性能を狙ったデリケートなものですから、ミッションごとに整備点検が欠かせません。
「いずも」級や「いせ」級では、どんなに改装してもその大きさが足りません
(強襲揚陸艦として使うんで、2~3機だけ、って言うなら別です)。
現代では、いわゆる「攻撃型空母」として成立させるには少なくとも6万5千トン、出来れば8万トン、せっかく作るんなら10万トンは必要じゃないかと思います。
あの頃は良かった
日支戦争から大東亜戦争にかけての「加賀」は十分な大きさと速度と航空機運用能力を持っていました。
もし、「加賀」がミッドウェイを生き延びていたら。
「天山」や「流星」なども機数を減らしながらなんとか運用できたでしょう。
「疾風」はどうかな?これも数がだいぶ減るでしょうね。攻撃隊随伴と上空直援が同時に出来ないくらいに・・・
その後は「練習空母」になるか、「対潜空母」として通商路を警備するか?
航空機の高性能化・大型化はそういうものなんです。悲しいですけど。
なにに使うのか
では、ヘリコプターだけ載せた「かが」「いずも」はなにに使うのか?
電脳大本営の見るところではズバリ、南シナ海の潜水艦狩りです。
もちろん護衛艦を引き連れていくことになりますが、「いずも」級には指揮能力があります。
「いずも」、「かが」(一緒に行動することはありません)が艦隊の中央でヘリによる対潜カバーをかけて、敵潜を探り出し、随伴の艦艇が攻撃すると思われます。
もし敵の航空機が出てきたら、随伴しているであろう「あきづき」級(イージス艦は日本近海で弾道弾を警戒しているので)の出番です。
また、「いずも」「かが」は450名もの人が長期宿泊可能ですから、「南シナ海派遣艦隊」の乗員の休息スペースとなります。
これはあまり着目されていませんが、大きなポイントですよ。
「いせ」「ひゅうが」との違い
では、「いせ」「ひゅうが」はどうするんでしょうか?
「いせ」「ひゅうが」は「かが」よりも一回り小さく(運動性が高く)、搭載する兵器システムも違うため、見つけた潜水艦を自分で狩りたてることが出来ます。
水上艦艇への攻撃能力も持っていますから、「いずも」「かが」よりも小編成の艦隊で、長距離シーレーンの防護に向いている、と言えるでしょう。
いえ、もっとはっきり言ってしまえば、敵の水上艦隊が出てきたとき。
迎え撃つ日本艦隊の中心になるのが「いせ」と「ひゅうが」でしょう。
この話、また書くと思います。今日はココまで。